FAQ2-1

Q. 透ける部分のあるビットマップを描画するには

　ペイントブラシで，範囲選択したあとにそこをドラッグすると，背景色の部分が透けて移動ができますよね.これっていったいどのようにしてやっているのでしょう？
　似たようなことをしたアプリケーションを作りたいのですが，方法がわかりません.

A. BitBltを利用する

　よくある方法では，ANDマスクのビットマップとXORマスクのビットマップを2枚用意して，透けた描画をするという手段があります.Windowsのアイコンやカーソルもこの方式です.
　しかしこの質問の場合，あらかじめ2枚のビットマップを用意しておけるというわけではなく，元は1枚の絵で，特定の色を透けたように描画する，ということで少し趣旨が違います.

BitBltの意外な利用法

　方法は最終的には同じになるのですが，特定の色を高速に判断する方法として，WindowsのAPIであるBitBltを利用した方法を紹介しましょう.BitBltは，普通，ビットマップの転送のために使うAPIです.
　しかし，これには意外な使用方法があります.通常，転送元のビットマップと転送先のビットマップは，カラーからカラー，またはモノクロからモノクロ，といったように同じ形式で転送を行いますが，これを，カラーからモノクロ，またはモノクロからカラー，というふうに別の形式にすると，BitBltは色の変換を自動的に行ってくれます.
　この色の変換方法が重要で，カラーからモノクロに変換するときは，背景色の部分を白に，そのほかの部分は黒に，といった具合に変換してくれます.(背景色は，SetBkColorで指定する色です.)こうして，特定の色を分別することができるわけです.

透かして描画する方法

　さて，分別できたはいいのですが，次はそれを利用して透かして描画する方法がなくてはいけません.これはまず図2-1を見てください.

[図2-1] :

　図2-1の「AND」や「OR」といった文字は，BitBltの最後のパラメータであるラスターオペレーションを意味しています.「AND」のときはSRCAND，「OR」のときはSRCPAINT，「INVERT」はDSTINVERTです.
　ANDすると，転送元と転送先の一つ一つのピクセルにおいて，どちらかが黒(ビットが0)のピクセルのとき，必ず黒になります.
　ORすると，どちらかが白(ビットが1)のピクセルのとき，必ず白になります.
　この特性は，カラーのビットマップにモノクロを転送しても同じです.こういった特性を駆使して，透けた描画ができるのです.
　リスト2-1にサンプルプログラムを示します.このサンプルは汎用性を持たせるように作ったため，結構ムダがあります.状況に応じて最適化できると思いますので，自分でいろいろ変えてみましょう.

[リスト2-1] : 

VOID PASCAL sample_SpriteBlt(
	HDC		hdc,			/*描画先DC	*/
	HBITMAP	hBmp,				/*ビットマップ	*/
	int		xxx,			/*描画する位置(x)	*/
	int		yyy,			/*描画する位置(y)	*/
	int		width,			/*描画する幅	*/
	int		height,			/*描画する高さ	*/
	COLORREF rgbBack			/*透ける色	*/
)
{
	HDC		hdcmemSrc;		/*元のBMP用*/
	HANDLE	holdSrc;

	HDC		hdcmemSrc2;		/*元のBMPの複製用*/
	HANDLE	holdSrc2;
	HBITMAP	hBmpSrc2;

	HDC		hdcmemMono;		/*モノクロ化したBMP用*/
	HANDLE	holdMono;
	HBITMAP	hBmpMono;

	HDC		hdcmemG;		/*描画先DCの複製(作業用)*/
	HANDLE	holdG;
	HBITMAP	hBmpG;
	
	hdcmemSrc   = CreateCompatibleDC(hdc);
	hdcmemSrc2  = CreateCompatibleDC(hdc);
	hdcmemMono  = CreateCompatibleDC(hdc);
	hdcmemG     = CreateCompatibleDC(hdc);
	
	hBmpSrc2  = CreateCompatibleBitmap(hdc, width, height);
	hBmpMono  = CreateBitmap(width, height, 1, 1, NULL);
	hBmpG     = CreateCompatibleBitmap(hdc, width, height);
	
	holdSrc = SelectObject(hdcmemSrc, hBmp);
	holdSrc2= SelectObject(hdcmemSrc2, hBmpSrc2);
	holdMono = SelectObject(hdcmemMono, hBmpMono);
	holdG = SelectObject(hdcmemG, hBmpG);
	
	/* キャプチャ */
	BitBlt(hdcmemG, 0, 0, width, height, hdc, xxx,yyy, SRCCOPY);
	/* モノクロ化 */
	SetBkColor(hdcmemSrc, rgbBack);
	BitBlt(hdcmemMono, 0, 0, width, height, hdcmemSrc, 0,0, SRCCOPY);
	/* AND(繰り抜き) */
	BitBlt(hdcmemG, 0, 0, width, height, hdcmemMono, 0,0, SRCAND);
	/* INVERT(モノクロ反転) */
	BitBlt(hdcmemMono, 0, 0, width, height, NULL, 0,0, DSTINVERT);
	/* AND(背景色消去) */
	BitBlt(hdcmemSrc2, 0, 0, width, height, hdcmemSrc, 0,0, SRCCOPY);
	BitBlt(hdcmemSrc2, 0, 0, width, height, hdcmemMono, 0,0, SRCAND);
	/* OR(重ね) */
	BitBlt(hdcmemG, 0, 0, width, height, hdcmemSrc2, 0,0, SRCPAINT);
	/* 描く */
	BitBlt(hdc, xxx, yyy, width, height, hdcmemG, 0,0, SRCCOPY);
	
	SelectObject(hdcmemSrc, holdSrc);
	SelectObject(hdcmemSrc2, holdSrc2);
	SelectObject(hdcmemMono, holdMono);
	SelectObject(hdcmemG, holdG);
	
	DeleteObject(hBmpSrc2);
	DeleteObject(hBmpMono);
	DeleteObject(hBmpG);
	
	DeleteDC(hdcmemSrc);
	DeleteDC(hdcmemSrc2);
	DeleteDC(hdcmemMono);
	DeleteDC(hdcmemG);
}

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